坂本式点字触読指導法


点字の触読の指導法は、点字を学ばれる方の触知覚の程度や、興味の度合いによって変化するものであり、様々な指導法がありますが、その1つの方法として、点字指導を37年にわたって続けてこられた坂本美磨子氏の方法があります。主な特徴をご紹介したいと思います。

1.点筆の持ち方と動き

   ・中指と薬指の第1関節と第2関節の間に針の部分を手の甲の方に出して挟み込む。

点筆の持ち方
写真1

   ・点筆の動きの支点は小指の第1関節と第2関節の間で、ひねって回すように動かせる。
点筆の握り方
写真2


2.行たどりとマス動き(教材1)


・右手、左手の人差し指を行の端に垂直に置き、左手の人差し指で行を左から右にたどり、右手の人差し指に触れるまで移動し、点を感じ取る。

教材1
教材1

   
・行間を戻りながら教材1行目から最後の行までをたどる。

教材1
教材1

   
・「め」をひとマスおきに打った行で、点のひとマスの幅を感じ取る(教材2行目)。

・人差し指がひとマスの幅で移動できるように、他の4本の親指、中指、薬指、小指がひとマス動きができるように、練習する。

教材1
教材1

   

3.読み書き同時進行(教材1)

   
・左手(右利きの場合)は読み、右手は書きに使い、写し書きをしながら点の位置を覚えていく(鏡字の防止)。

   
* 左手で3マス動き、「め」の打たれていないところで止めて、右手で2マス打つ(教材3行目)。「め」は123654の順に入れていく。映像を見るにはここをクリック。

   
* 左手で6マス動き、6マス目がどの点が抜けているのかを感じる(教材7行目)。1の点がないことが分かったら右手で32456のように1の点に触れずに点を入れ、ひとマスおきに1行入れていく。さらに、左手で4の点がないことが分かったら、右手で12365の順に4の点に触らずに点を入れる。同様な作業を教材7行目から最後の行まで続ける。

4.点の少ない音から導入


・ア行(母音):書くときは、ア:1、イ:12の順に入れる、ウ:14の順に入れる、エ:412の順に入れる、オ:42の順に入れるようにし、ない点は触らないようにする。


・カ行、ナ行(母音をいれてから子音を入れる)

教材2
教材2

 
・ハ行、ラ行、マ行

教材3
教材3

・サ行、タ行、ヤ行、ワ行の順に50音を練習。

教材4
教材4


5.ケース紹介

   
視聴覚二重障害の方(46歳、網膜色素変性症、視力R:0.02; L:0.01、視野:中心暗点)で、訪問指導で行った過程を紹介します(2002年4月から週1回2時間で、そのうちの1時間は歩行訓練の場合もあります)。


   4/19: 点筆の持ち方、点の入れ方
   4/26: 点字版の使い方
   5/10: マス動き(教材1)
   5/17: 教材1、7行目から10行目まで
   5/31: 教材1、11行目から15行目まで
   6/7 : 教材1、15行目から最後まで、ア行導入(教材2)
   6/14: カ行、ナ行導入(教材2)
   6/21: ハ行、ラ行、マ行導入(教材3)
   6/28: サ行、タ行、ヤ行、ワ行、ン導入(教材4)
   7/5 : アカサタナの順に復習、清音をランダムに復習
   7/12: 単語(清音)練習、濁音、拗音導入
   7/19: 拗濁音導入
   8/30: 単語(濁音)、短文練習

  点字教材(短文)を読み、書いているところ(2001/8/30に録画)を紹介いたします。ここをクリックしてください。



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この坂本美磨子著の点字教材、点字指導法の初版は日本ライトハウス発行、「視覚障害研究第16号(1981)」です



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