私たちは今まで1つのタイプの屈折異常、“屈折力が大き過ぎる”、近視眼を扱ってきました。硬貨にもう1つの面があるように―目には不十分な屈折力か、もしくは“短過ぎる”か、あるいは両方の場合があります。この目は遠視(hypermetropic(hyperopic))あるいは“遠目(farsighted)”です。それもまた網膜と共役になった遠点(物体)がなくてなならないのですが、どこにあるのでしょう?古くて頼りになるU+P=Vの中のUについて解くことで求めてみましょう。55Dの“弱い”屈折力Pを省略眼にあてはめてみると、これは5Dの遠視となります。その長さはまだ22.2mmです。
U+P=V=
U+55=
U+55=60
U=+5D
私たちの符号の慣習を思い出しますか?+5DのUは網膜上の像と共役関係にある物体が目の後ろ20cmの位置になければならないことを意味します。つまり、物体光線は目の調節が働いていない時は網膜上に鮮明に焦点を合わすために20cm目の後ろに収束しなければなりません。この点Rは私たちの定義を満たすのでこの目の遠点面の位置を示します。
私たちはすでにどんな実際の物体でも収束物体光線(convergent
object rays)を発しないことを知っています。だからもし遠視眼が休んでいる目の屈折力(この場合は弱過ぎる)を調節によって増加できないならば、遠視眼は決して実際の物体からの像点を鮮明に結ぶことはないでしょう。
この遠視眼は調節なしで無限遠を見る時は、U=0です。
U+P=V
0+55=
55=
f’=
この眼球は(24.2−22.2)、つまり2.0mm短過ぎ、F’は網膜の後ろにできます。ゆえに、鮮明な像点の代わりに網膜上にぼけた点があります。しかし、それは確かに正視眼の近い物体に対する反応を調べた時に私たちが見たものであり、物体が目に近付いた時その像は網膜の後ろに(光学的に)動いて網膜像をぼけさせる傾向があると習ったのです。この像を網膜上に“引っ張る”のが調節でした。だから、ここで遠視眼でもまた、網膜上のぼけた像が調節を刺激して鮮明な像を前に“引っ張り”、網膜上に焦点を合わせます。
無調節の正視眼は近い物体とそれに連合した発散物体光線に関してだけは“弱過ぎ”ます。遠視眼にとっては像を網膜の後ろに退かせるのは物体の近接だけではありません。遠視眼は全ての距離に対して相対的に弱過ぎ、平行な物体光線を網膜上の鮮明な焦点に持って行くのにさえ弱いのは当たり前です。正視では調節は近い所だけで必要とされますが、遠視では調節は遠方でさえも必要で、そして近いところではもっと必要です。
2Dの遠視は遠方を鮮明に見るためだけに2Dの調節が必要でしょう。素材を彼の目から20cmで読むためには、彼は正視眼の人と同じ()よりも2D多く加え、合計して7Dを彼の遠視を克服するために調節しなければなりません。彼は絶えず同年代の正視の友達よりも調節の蓄えを高い割合で使わなければならないので、彼は同僚よりも早い年齢で老眼の兆候をよく示すかもしれません。
先ほどの図に戻ってみましょう:遠点Rは網膜の“後ろ”にあり、第2焦点であるF’もまた網膜の“後ろ”にある事実はみなさんに2つを混同させてしまいます。そうではありません。これらの実在するものの間の違いは水晶のように鮮明でしょう。
1)
F’は無限遠にある物体と共役な像で、一方Rは網膜上の像と共役な物体です。
2)
網膜からF’までの距離はとても短く(通常はミリメートルかそれの一部分)、一方で網膜からRまでの距離は比較的とても長く、それはほとんど8か9cmよりも決して近くはなくて、“無限に”長いかもしれません。
決してF’とRを図の中では混同しないでください。
近視と遠視の遠点に関する議論はあなたには最高の値打ちがあるでしょう。遠点が非正視の臨床的な矯正の最重要点ですから、今までやったこととこれからやる全ての課題の中でこの課題はたぶん一番重要です。概念としての遠点にあなたはとても心地よさを感じるに違いありませんので、これを頭の中に焼き付けてください:遠点Rは無調節の目に属しているのであって、矯正レンズに属しているわけではありません。カキの上にくっついたフジツボのように目にぴったりとくっついているようにRを描いてください。それは非正視のタイプと量が要求するように、目から(前か後ろへ)ある距離だけ突き出していると想像してみます。レンズの働きはこの遠点に言及されなければなりません―それは全ての矯正レンズの働きを理解するための基礎として役に立ちます。