第1節 模型眼

目の屈折面について学ぶ手助けとして、標準モデルを利用しなければなりません。そのようなモデルを死体眼や生体眼の研究を通して作っていく中で、多くの顕著な科学者は大きさ、容積、光学的特徴が平均的な生体眼の特徴に近い模型眼を創造しました。これらのモデルの中で最も重要なものはノーベル賞を受けた唯一の眼科医、Gullstrandによって公開されました。いくつかの論理的な仮定と測定を使って、彼は大きさを創造し、光学的な主要点を位置付けました。これらはどんな標準的な教科書[1]でも見つけられます。

模型眼は目が光学的にどのような働きをしているのかをよく理解するために役に立ちますが、最初はちょっとやっかいな道具なのです。もっと有用な模型はこのGullstrandの模型眼をただ1つの屈折面と、1つの屈折率を持った眼内媒質に統合された構造に簡素化して作られています。この模型眼はGullstrandの全ての大きさと同じですが前面の曲率が違っていなければなりません。というのは元来の角膜だけでなく全ての眼内構造を単一の屈折面に置き換えているからです。それでこの新しい目(略式模型眼あるいは単に省略眼と呼ばれます)はGullstrand眼や本当に実在する角膜で求められた角膜の寸法による前面屈折力よりもかなり大きくなければなりません。

下図はそのような省略眼の大きさを表しています。屈折異常やあとで取り上げる拡大の議論の中で使うのはこの目です。

 

 

 

 

 

略式模型眼[2]

 


 

 

 



[1] Ogle, K.: OPTICS

 C.C. Thomas, Springfield, 1968, pp. 156-7.

[2] 60Dの目として上に上げられている略式模型眼の定数は少しごまかされています。P=60Dなのですから、本当の焦点距離=16.67mmとなり、これは扱いやすいように概数にすると17mmとなります。この小さな“罪のない嘘”は眼軸長が22.5mmであるというもう1つの誤りを必然的に生じます。

 どのようにこれは引き出されたのでしょうか?P=60D、n=1.33と仮定すると、“角膜”面の曲率半径r(この目では面とNの間の距離)はあなたが教えられたようにpp. 61-63正確に計算されます。

    

NからFの距離はいつもfと等しくなるので(ここでは17mmで、とても鍵となる数字です)、略式模型眼の全体の軸長は5.5+17つまり22.5mmとなります。これは上図に与えられた長さですが、しかしそれはfの近似値である“17mm”を推定していることを思い出してください。実際の軸長は5.5+16.67=22.2mmで、それもまたこの略式模型眼のf′なのです。確認してみましょう。

         これで一致しました

ゆえに、上図では、60D17mmという数値を“神聖な”ものとして維持するために精密さを少し犠牲にしました。特に17mmという数値は続いて目の大きさを議論するのに重要です。あとでpp.111-118取り換えて、“ごまかした”22.5mmの代わりに“正確な”軸長である22.2mmを使うでしょう。